Q&A
借り入れができなくなったことがあるのですが、過払い金は取り戻せますか?
1 なぜ借り入れができなくなるのか
貸金業者やクレジットカード会社は、借主の勤務先や収入の状況、他の貸金業者等からの借入額などの属性情報や、貸金業者やクレジットカード会社の経営状況などを勘案し、一方的に借入可能額を引き下げたり、貸付を停止したりします。
これは、回収不能リスクのある借主に対して、一定額以上の貸付けを停止することで、自社のダメージを回避するという考えに基づくものです。
当初の契約書に、このことが書かれていることもあります。
一般的に、取引停止措置などと呼ばれることがあります。
2 取引停止措置と過払い金返還請求との関係
通常、取引停止措置がなされると、その後は返済のみを行うことになります。
そうすると、取引停止措置がなされた日と、最後の取引日(返済日)にずれが生じます。
取引停止措置がなされた日の後に、最後の取引日が追随する形になります。
借入額によっては、取引停止措置の日から1年以上後に、最後の取引日が存在することもあります。
問題となるのは、取引停止措置の日が10年以上前で、最後の取引日が10年以内にある場合です。
通常、過払い金返還請求権の消滅時効は、最後の取引の日から進行します。
ところが、取引停止措置の日が10年以上前であった場合、貸金業者等は消滅時効の主張をすることがあります。
具体的には、過払い金に関する重要な判例(最一小判平成21年1月22日)が、「借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点」から消滅時効が進行するという趣旨の判断をしたことを捉え、取引停止措置によって新たな借入金債務の発生が見込まれなくなったという理屈で、消滅時効が進行するという主張をします。
3 過払い金返還請求が長期化するおそれ
取引停止措置による消滅時効は、昔から大きな争点ではありました。
従来、借主側が勝訴することが多く、取引停止措置が消滅時効の起算点にはならないという方向で裁判実務は固まってきているように考えられました。
しかし近年、貸金業者等側の主張を認める裁判例が散見されるようになりました。
これを機に、貸金業者等は、全面的に争う姿勢を見せ始めています。
ほとんど和解にも応じないどころか、裁判例を五月雨式に提示することもあり、訴訟が長期化することもあります。
具体的に争われるポイントは、①取引停止措置によって新たな借入金の発生が見込まれなくなったといえるか否か(再度借入が復活する可能性との関係)、②取引停止措置がなされたことを借主が認識する必要があるか否か、です。
どうやって過払金の有無を調べるのですか? 相続人も過払い金を請求することができるのですか?