幼児の死亡事故の逸失利益
1 死亡事故における逸失利益
幼児が交通事故で死亡した場合、被害者の遺族は、加害者に対し、幼児の逸失利益を請求することができます。
死亡事故における逸失利益とは、死亡した被害者が、交通事故で死ななければ、就労して得られたはずの収入をいいます。
2 逸失利益の計算
幼児の死亡事故の逸失利益は、次の計算式で算出されます。
逸失利益=基礎収入(賃金センサス学歴計・全年齢平均賃金)×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数(67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数)
3 基礎収入
交通事故の被害者が、就業している社会人であれば、通常、交通事故発生時の具体的な年収が基礎収入とされます。
ところが、被害者が幼児の場合、将来、どのような仕事に就いて、どの程度の収入を得るのかが不透明です。
そのため、基礎収入をどのように設定するかについて、争われることが珍しくありません。
一般的には、被害者が18歳未満の場合には、賃金センサスの学歴計・全年齢の平均賃金を基準にする例が多いといえます。
参考リンク :厚生労働省・賃金構造基本統計調査
女性の平均賃金は男性の平均賃金より低い社会的実態があるため、女児の基礎収入として賃金センサスの女性の平均賃金を用いると、男児と比べて逸失利益が低く算定されてしまうという問題が生じます。
そこで、近年は、将来の職業選択の多様性を考慮して、年少の女児の死亡逸失利益の算定において、男女計の全年齢平均賃金を用いる傾向にあります。
4 生活費控除率
被害者が死亡した場合、生きていれば当然に必要となる生活費の支出を免れることになります。
そこで、得られたであろう収入から、被害者の死亡後の生活費が控除されます。
生活費控除率は、裁判実務上、男児は50%、女児は30%とするのが一般的です。
なお、女児の基礎収入として、男女別の平均賃金ではなく男女計の平均賃金を用いた場合、生活費控除率は45%とするのが一般的です。
5 就労可能年数に対応するライプニッツ係数
逸失利益は、将来にわたって発生するであろう収入を一時金として算定されるため、中間利息を控除する必要があります。
その際、複雑な計算を簡単にするために、通常、ライプニッツ係数が用いられます。
就労可能年数は、通常、交通事故にあったとき(死亡時)から67歳までの期間と考えられています。
ただし、いまだ就労年齢に達していない幼児の場合、稼働可能期間の始期を18歳と考えるのが一般的です。
6 弁護士への交通事故相談
このように、幼児の場合、将来得られたであろう収入というフィクションの要素が強いため、適切な逸失利益の賠償を受けるためには、しっかりと算定をする必要があります。
より有利な事情をベースにして算定し得るケースもありますから、交通事故に詳しい弁護士に相談されるとよいでしょう。
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