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椎間板ヘルニアとむちうち症について

  • 文責:弁護士 鳥光翼
  • 最終更新日:2021年2月16日

1 椎間板ヘルニアとは

椎間板ヘルニアとは、背骨をつなぐクッションの役割をしている椎間板が後方に飛び出した状態をいい、飛び出した椎間板が神経根や脊髄を圧迫することにより、痛みやしびれが生じます。

上記飛び出した状態については、MRI検査を行うことにより、画像上での確認をすることができます。

背骨は、頸椎(首の部分)、胸椎(胸の部分)及び腰椎(腰の部分)に分かれていることから、ヘルニアがある位置により、それぞれ頸椎ヘルニア、胸椎ヘルニア及び腰椎ヘルニアと呼ばれて区別されることがあります。

2 事故と椎間板ヘルニアとの関係について

しばしば、症状が改善しない頸部痛(むちうち症)や腰痛につき、MRI検査を行った際に椎間板ヘルニアが発見されることがあることから、この椎間板ヘルニアが事故により発生したものであるか否か、問題となることがあります。

事故により生じたものであれば、事故の加害者は、これにより生じた損害(治療費など)を負担すべき義務があります。

また、痛みのみであれば、後遺障害等級としては14級9号(局部に神経症状を残すもの)にとどまるのに対し、椎間板ヘルニアが事故により生じたものと認定された場合には12級13号(頑固な神経症状を残すもの)となり、賠償金の額が増加する可能性があります。

3 事故により椎間板ヘルニアが発生する可能性について

事故前には何ら痛みはなかったのに、事故後に痛みが発生し、かつ、椎間板ヘルニアが見つかったことから、事故により椎間板ヘルニアが生じた旨の主張がされることがあります。

しかしながら、実際には、以下の理由により、事故により椎間板ヘルニアが生じたものと認めることは困難であることが一般的です。

⑴ 椎間板ヘルニアは、その多くは、加齢により、あるいはしばしば誘因(原因)なくして生じるものとされています。

このため、事故後に椎間板ヘルニアが発見されたというだけでは、上記事故以外の原因により発生した可能性が残ることとなり、事故により生じたと認めるには証拠不十分ということになります。

⑵ 骨折の場合であれば、画像を分析することにより、その骨折が新規に生じたものか、以前からあったものか判断できる場合がありますが、椎間板ヘルニアについては、そのような判断手法が存在しないこと。

⑶ 椎間板ヘルニアがあっても、無症状であることが多いこと。

このため、痛みが生じたのが事故後であったとしても、ヘルニアについては事故前から存在していた可能性があることになります。

⑷ 事故による外力に伴いヘルニアが生じたのであれば、椎間板以外の他の周辺箇所にも事故における外力による痕跡(傷害)が生じるべきところ、そのような事例はほとんどないこと。

4 まとめ

事故後に椎間板ヘルニアが見つかったととしても、これが事故により生じたものと立証できるかについて、慎重に判断する必要があります。

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