交通事故の慰謝料増額交渉
1 交通事故被害者の慰謝料
交通事故の被害に遭われた方に対する損害賠償の項目のなかには「慰謝料」という項目があります。
この慰謝料というのは、簡単に説明すると「つらい思いをした精神的苦痛を、お金で埋め合わせする。」という内容の損害賠償のことをいいます。
慰謝料は、精神的苦痛という目に見えないものに対する賠償であるため、妥当な金額の計算が、他の損害賠償の項目に比べて判断が難しくなる傾向があります。
たとえば、治療費のように実損害額が証拠上明確に数字で表れるものについては、「病院で~円請求されたから、その分を損害賠償してください。」と説明することは容易です。
これに対して、精神的苦痛に対する賠償は「私の苦しみは~円分の苦しみだ。」と、どのような根拠に基づいて主張すればいいのかが曖昧になりがちです。
そこで、交通事故のように数多くの事件が起きている類型については、保険会社や裁判所において、慰謝料計算の基準表が作成され、その基準表に従って、慰謝料を計算することが実務の慣行となっております。
ただし、基準表があるといっても、その基準表は一種類だけではなく複数存在しており、保険会社や裁判所によって、それぞれ準拠する基準表が異なっています。
2 慰謝料に関する代表的な基準
代表的な基準表には以下のものがあります。
⑴ 自賠責保険基準
強制加入の自賠責保険から支払われる金額を計算する際の基準で、通常、計算結果は最も低い金額となります。
具体的な計算方法は、原則として、通院1日あたり4300円として計算されます(令和2年4月1日以降に発生した交通事故の場合)。
仮に、実通院日数の2倍が通院期間日数を下回る場合は、実通院日数の2倍に4300円を積算して金額算定がなされます。
参考リンク:自賠責保険・共済ポータルサイト・限度額と補償内容
⑵ 任意保険基準
各任意保険会社が独自に作成した基準であり、概ね自賠責保険基準と同等か、若干自賠責保険基準を上回る程度の計算結果となる基準です。
⑶ 裁判所基準または弁護士基準
裁判所が慰謝料額を判断する際に準拠する基準であり、通常、自賠責保険基準や任意保険基準より高額となります。
なお、地域によって「裁判所基準」にも何種類かあり、計算結果はどの地域の「裁判所基準」に基づいて計算するかによって異なります。
弁護士が、加害者側の保険会社と慰謝料の金額について交渉する際には、この「裁判所基準」に即した計算で交渉を行い、「任意保険基準」から増額を勝ち取ることを目指します。
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