後遺障害や死亡事故の逸失利益
1 交通事故における逸失利益
交通事故に遭い、治療は終了したが重い後遺障害等が残ってしまったので、治療中に被った損害だけではなく、事故に遭わなければ将来的に稼げたであろう金銭も賠償してもらいたいなどと考えられる方も多いかと思います。
上記のような交通事故に遭わなければ将来にわたって得られたであろう利益のことを逸失利益といい相手方から損害として賠償を受けることができます。
2 逸失利益の計算方法
では、逸失利益はどのように計算されるのか、その一般的な計算方法についてみていきます。
なお、以下の計算方法はあくまでも一般的なものですので、個別的な事情に照らした具体的な逸失利益がいくらになるのか確認したい方は、弁護士にご相談ください。
⑴ 後遺障害の逸失利益の計算方法
ア 一般的な計算方法
一般的に後遺障害逸失利益を計算する場合には、「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数」という計算式が用いられています。
イ 基礎収入
基礎収入は、原則として事故前の現実収入が基礎となります。
ただ、後遺障害逸失利益は、将来にわたって得られたであろう利益を問題とするため、将来、現実収入額以上の収入を得られる立証があれば、その金額を基礎収入とすることもできます。
ウ 労働能力喪失率
労働能力喪失率については、認定された後遺障害等級によりある程度基礎となる率が決まっています。
例えば、後遺障害14級が認定された場合には、労働能力喪失率は5%が一応の目安となります。
⑵ 死亡事故の場合の逸失利益の計算方法
ア 一般的な計算方法
一般的に死亡逸失利益を計算する場合には、「基礎収入×(1-生活費控除率)×稼働可能期間に対応する中間利息控除係数」という計算式が用いられます。
イ 生活費控除
交通事故に遭った方が亡くなった場合は、逸失利益が生じるのと同時に、亡くなったことによって支出しなければならなかったはずの生活費を支出しなくてよくなったとみられます。
そのため、事故の相手方に請求できる死亡逸失利益の額を算定する際には、死亡したことにより支出されなくなった生活費を控除することになります。
生活費控除は、計算式に(1-生活費控除率)を乗ずることで行います。
生活費控除率の割合は、法律上の定めがあるわけではありませんが、自賠責保険では、被扶養者がいる場合は35%、被扶養者がいない場合には50%の生活費控除率が支払基準として定められています。
また、いわゆる「赤い本」では、被害者が一家の支柱であった場合で①被扶養者が1名の場合は40%、②被扶養者が2名以上の場合は30%といった基準が記載されています。
しかしながら、裁判をした場合必ずしも「赤い本」記載の生活費控除率に従い死亡逸失利益が算出されるわけではないことに注意が必要です。